コーラ白書
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南太平洋とタスマン海の間に浮かぶ国・ニュージーランド。豊かな自然と景勝地に恵まれたこの美しい島国は、その隔絶された地理ゆえ生き物が独自の進化を遂げたとこでも知られる。ニュージーランドのシンボルである飛べない鳥・キーウィはその代表だ。

そして驚くべきことに、コーラにも同様の進化が見られるのだ。人口約420万人と決して大きくないかの国でコーラは独自の進化を遂げており、PHOENIX ORGANIC COLAなどの固有種が確認されている。しかしその情報は、北米や欧州に比べると少ない。

ずっと気になる国であったニュージーランド。と、ある日妻がニュージーランドの友人に会いに行きたいと言った。これぞ渡りに船。私はすぐにマイルをチケットに代え、4月下旬には機上の人となっていた。

 


 

ニュージーランドの玄関口・オークランドの空港に着いたのは関空を飛び立って11時間後。南半球の秋口にあたる時期ながら、この日は天気に恵まれ日本と同じくらいの爽やかは気候だった。

空港からAIRBUS EXPRESSという水色のバスに乗り、ダウンタウンへと向かう。午前中ということもあってか、二両連結バスの乗客はまばらだ。終点のフェリーターミナルで降りると、潮の匂いがした。

港のすぐ近くのホテルに着いたのはお昼前だったが、幸い部屋が空いていてすぐにチェックインができた。オーシャンビューではないが、窓からはオークランドの象徴であるスカイタワーが見える。

少し休憩した後、荷物を整えて街に繰り出した。

オークランドの愛称は「CITY OF SAILS」という。港には多くのヨットが帆を連ね、重厚なバロック様式のフェリーターミナルビルの前ではデボンポートやランギトト島行きのフェリーが出航を待っている。坂道の多い通りに新しいビルと歴史的建造物とが混在した美しい街並みが広がっている。

お腹がすいたので、ターミナルビルの1階にあるレストランで昼食をとることにした。海に面したオープンテラス席を陣取り、サーモンのソテーとコカ・コーラを頼む。目の前の海と行きかう船を見ていると、ようやくニュージーランドにやってきた実感が沸いてきた。

オークランド コーラ散策

オークランドのメインストリートはQueen’s Street。フェリーターミナルを起点に街を南北に大通りが貫く造りは、かつて港が街の中心であったことを偲ばせる。現在でも銀行やオフィスビル・ブランドショップなどが軒を連ねる、街の大動脈だ。

カナダやアメリカでの経験から言うと、大都市のメインストリートで地元のコーラが見つかることはまずない。頑張ってもスーパーやコンビニで大手のコーラが入手できる程度だ。狙うべきは大通りから一本入ったところの小さな商店、それもチェーンではなく個人で経営しているお店なのだ。

Queen’s Streetを5分ほど東に歩くと、Victoria Streetとの交差点についた。Victria Streetはスカイタワーへ向かう東西の通りで、小さなカフェやレストランが並ぶ。メインストリートに比べるとぐっとカジュアルな雰囲気だ。迷わずそちらに足を向けた。

Victoria Streetに入ってしばらく行ったところで、Gloria Jean's Coffeesというカフェが目にとまった。コーヒーとマフィンなど軽食を扱う、大学の近くでよく見るようなオープンな雰囲気のお店だ。。その中の冷蔵棚に、「COLA」の文字が見えたような気がした。近寄ってよく見ると、ALLGANICS Colaというニュージーランド製のコーラであった。濃い緑色のガラス瓶が新鮮だ。

"ALLGANICS"の名前から察する通り、原材料にはオーガニック材料が数多く使用されている。価格はNZ$4(約280円)。同じ店のコカ・コーラがNZ$2なので、かなり強気の設定である。

 


 

ローカルコーラ第一号発見に気分をよくしてVictoria Streetを歩いていると、今度は小さな個人商店を見つけた。店の名前はFRESH N' FRUITY。入口には大きく「お菓子・飲料・雑誌・インド食材・・必要なもの全て」と書かれてある。これは期待が持てそう。

店内は思ったより綺麗で、密度の高いコンビニのような感じ。飲料の取扱いが多く、壁一面が飲料棚になっている。特にエナジードリンクの品ぞろえが豊富だ。

そんな中で2つ新しいコーラに出会った。

一つはPhoenix ORGANICSの新作、HONEY COLA。甘味料に砂糖を一切使わず、蜂蜜のみで仕上げた贅沢なオーガニックコーラだ。アメリカのDRAFT HONEY COLAのような蜂蜜を使ったコーラはあるが、甘味料が蜂蜜のみというのは例がない。

もうひとつはCH'I のAll natural colaである。ずんぐりとした500mlPETに入った、カフェインフリーのコーラだ。原材料には天然の炭酸水やサトウキビ、チャイニーズハーブなど天然材料が多く使われている。ただこちらは在庫処分品だったようで、$1でカゴに山積みにされていた。

ずっしりと重みを増したバックパックを背負いながら、幸せな気持ちで先を急いだ。

期せぬ再開

港と並ぶオークランドのシンボルといえば、スカイタワーだ。高さ328m、南半球一の高さを誇るタワーで、展望台からはオークランドの街を360度見渡せる。見上げると首が痛くなるような高さだ。

と、何やら展望台がら人が落ちてくるではないか! 黄色いジャケットに身を包んだ人がすごいスピードで落ちてきたかと思うと、着地直前で減速し、舞台の上にひらりと降り立った。

これはSKY JUMPという、スカイタワーのアトラクションの一つ。さすがバンジージャンプ王国のニュージーランドらしいなと思っていたら、それだけでは終わらなかった。まずエレベーターの床がガラス張り。そして展望台の床の一部がガラス張りと、これでもかというほどの高さ押し。高所恐怖症でなくても十分怖かった。

 

スカイタワーからVictoria Streetをさらに北に歩いていくと、徐々にアパートや町工場が増えてくる。アメリカだったらちょっと気をつけないといけないような雰囲気の一角で、1件の食料品店を見つけた。壁がすべてエナジードリンクの宣伝のため一見ポップなお店に見えるが、薄暗く雑然とした中の雰囲気は間違いなく個人商店である。

無愛想な店員のいるカウンターを抜けて、飲料棚を覗いてみると、思わぬコーラに出会った。

Royal Crown Draft Cola、通称RCドラフト。

世界初のドラフトスタイルコーラとして1995年に発売され、その後のプレミアムコーラの先駆けとなった偉大なるコーラだ。過去にアメリカやカナダ、日本でも発売されたが、10年以上前に姿を消している。それがニュージーランドでいまでも販売されているとは。褐色瓶や青い星のラベルなど、当時と同じパッケージだ。

ラベルによると販売元はRoyal Crownはなく、オーストラリア東海岸のアルコール飲料メーカー、Bundarburg Brewed Drinksになっている。オーストラリア東岸のバンダバーグを拠点にする、ジンジャービアなどで有名な飲料メーカーだ。ここがRoyal Crown Draft Colaのオーストライリア・ニュージーランドでの権利を入手して製造販売をしているようだ。

思わぬところで往年の名コーラに出会えて嬉しい反面、コーラ市場に様々なイノベーションを起こしたRoyal Crown Cola社が事実上切り売りされてしまっている現状を目の当たりにし、ちょっと複雑な気分になった。



ニュージーランドのコーラのトレンドは「素材系のプレミアムコーラ」という印象を受けた。オーガニックや天然材料を謳ったコーラがコカ・コーラより高い価格で普通に販売されているのは、ニュージーランドの人の食材への意識の高さを反映しているのだろう。

夕方近くにもなると、さすがに電池が切れてきた。タワーの近くのメキシカンレストランでエンチュラーダとスパイシートマトジュースを堪能し、ホテルへの帰路に着いた。